『シロクマについて考えないでください』

2024年 6月 20日 木曜日

みなさんこんにちは!

4月から異動して早3ヶ月。保健師として8年間同じ仕事をしてきたので、畑の違う仕事を一から覚えることの大変さを痛感しているところです。歳のせいもあるのでしょうか…笑

 

そんな私から皆さんに試していただきたい実験があります。

 

『』内に実験の指示を出しますので従ってください。

それでは実験を開始します。

     

 

『シロクマについて考えないでください。』

 

 

 

 

 

 

 

 

実験は以上です。みなさんどうでしたか?

指示通り、『シロクマについて考えない』ようにできましたか?

…ほとんどの方がシロクマを思い浮かべたのではないでしょうか。

 

これは心理学者ダニエル・ウェグナーが行った実験で、「シロクマ実験」と言われています。

先ほど皆さんに行っていただいた内容と同様、被験者には一定期間シロクマについて考えないよう指示しました。

その結果は意外なもので、被験者の心はより一層シロクマのイメージに引き寄せられました。

 

この現象を皮肉過程理論と言い、考えないようにすると、よりそのことを考えてしまうという理論です。今回の場合で言うと、シロクマを考えないようにすればするほど、シロクマのイメージが頭から離れなくなります。

 

なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

それは、脳は否定形を理解することができないからです。

 

脳では否定形を理解するために、否定されている内容や行動を一度イメージ化します。

「お菓子を食べてはいけません!」

こう言われると、脳にはまず、
「お菓子を食べる」というイメージが届きます。

 

その後、「いけない」とい情報が届き、「お菓子を食べてはいけない」と理解する構造になっています。

 

人間はイメージをすると行動として現れてしまう為、禁止されているにも関わらずお菓子を食べたくなってしまう(食べてしまう)のです。

イメージを与えることで暗示をかけてしまっているとも言えます。

 

私は今まで糖尿病患者の生活習慣是正のための保健指導を行ってきました。

行動変容を促すため、必ず目標を立案するのですが、どのように目標立案したら効果的かと模索していた時に出会ったのがこの理論です。

「間食をしない」

「煙草をやめる」

「糖尿病が悪化しないようにする」

 

 

これらは保健指導で良く聞く目標内容です。

 

しかし、この目標では悪いイメージを与え、むしろ悪い行動を行うよう仕向けていると言えます。

 

じゃあどうしたらいいのか。

「否定形」「肯定形」に変えればよいのです。

 

「間食をしない」→「野菜を食べる(満腹感upにより間接的に間食を減らす効果がある)」

「煙草をやめる」→「禁煙外来に行く

「糖尿病が悪化しないようにする」→「血糖値を下げる

 

このように肯定的な目標立案を行うと、目標達成率が向上します。

 

これは保健指導だけに言える話ではなく、仕事や日常生活でとても役に立つ理論です。

 

 

目標を立てる時、教育を行う時、誰かにお願いをする時etc.

 

して欲しくないことを伝えるのではなく、して欲しいことを伝える。

 

言葉の使い方次第で行動は大きく変わります。

ぜひ皮肉過程理論を活用してみてくださいね。